リドリー・スコット監督の新作「アメリカンギャングスター」は久しぶりの大人の味わいの刑事・犯罪映画
温泉になかなか行けないので、映画や読書、音楽三昧
の毎日。そこで、また映画でお茶濁し。最近のCGで
どんなアクションでも作ってしまう映画にはちょっと
食傷気味。ファンタジーものなんてのはとくに「ロー
ド・オブ・ザ・リング」でもう十分な気分になってし
まう。しかし、その手のファンタジーものはあとから
あとからやって来る。そんな流れので中でCGほぼなし、
アクションも派手なもの皆無で、ドラマで魅せる刑事
犯罪ものとしてリドリー・スコット監督の新作「アメ
リカンギャングスター」は久しぶりに大人がじっくり
堪能できる映画だった。
デンゼル・ワシントンとラッセル・クロウがスコット
監督のメガフォンのもと共演する実録犯罪サスペンス
と来ただけで映画ファンの心をくすぐる。クロウとス
コット監督が組んだ前作「プロヴァンスの贈り物」が
今ひとつピンと来なかったのだが、今回のは期待通り
のリアリスティックな犯罪映画。
デンゼル・ワシントンの知性派黒人ギャングの冷静沈
着なスタイリッシュなギャングも出色。そして、「LA
コンフィデンシャル」での刑事にも相通じる職務一直
線のはみ出しデカのクロウがいい味出している。
映画は1970年代のニューヨークを舞台に、それまで
のマフィアのやり方とは異なる麻薬ビジネスで暗黒街
で勢力を拡大する黒人ギャングの動きと、一切の買収
に応じることなく職務一直線ではあるが、家庭的には
崩壊状態の刑事の麻薬捜査が丁寧に描写されて行き、
ラストへ向けてスリリングに展開する。
60年代末のニューヨーク。黒人ギャングのボスの右
腕として働いて来たフランク(ワシントン)はボスの
死後、ボスの地盤を引き継いで、東南アジアのトライ
アングル地帯から純度100パーセントヘロインの直接
仕入の独自ルートを作る。
それは麻薬流通ルートで中間搾取をせず、確実な輸送
手段で麻薬生産業者とヤク中をダイレクトに直結、良
質で安価な麻薬を供給する真っ当な経済原理に基づい
た新しいビジネスとして大成功して行く。
しかし、それは既存のマフィアやフレンチコネクショ
ンルートの麻薬商売と敵対することになるとともに、
買収や押収麻薬の転売で汚いカネを手にしていた腐敗
した警察官たちとも対立して行くことになる。このフ
ランクのビジネスはモノが麻薬でなければまさにやり
手のエリートビジネスマンそのもの。その知的なキャ
ラクターと容赦なく敵を殺す冷徹さをデンゼル・ワシ
ントンが演じ切る。
一方、買収などで腐敗し切っているニュージャージー
警察の刑事リッチー(クロウ)は、警官の汚職が当た
り前のなか職務一直線の潔癖性で周囲から浮いた存在
になリ、孤立していた。司法試験の勉強もしながらの
刑事の仕事だが、私生活では離婚した妻と養育権裁判
中。そんな彼を検察官が麻薬特別捜査班の責任者に抜
擢する。そして、既存の麻薬組織とは違う動きでなか
なか捜査が進まなかったフランクの組織が浮上して来
て、リッチーたちの捜査網が追って行くことになる。
ドラマの進行はどこまでも淡々と進む。麻薬組織を育
て上げて行く過程などが丁寧に描かれているので実話
を元にしたリアリティがさすがだ。銃撃のシーンなど
もほとんどなく、カーアクションさえ皆無に近く、犯
罪組織の動きと捜査陣の動きが徐々に交差して行くサ
スペンスの醸成が見ものだ。上映時間157分、飽き
ることまったくない。久しぶりに大人の味わい映画。
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