戦争という異常状況下でスリリングに展開する男女の愛の刹那さを描くアン・リー監督「ラスト、コーション」
「いつか晴れた日に」「楽園をください」「グリー
ン・デスティニー」「ハルク」「ブロークバック・マ
ウンテン」と題材、ジャンル、起用俳優など毎回多彩
で変幻自在な映画が続くアン・リー監督がまたまたや
ってくれました。158分の超大作。その時間の長さ
を全く感じさせないドラマの濃密で緊密な展開は余裕
の風格さえ漂う映画が「ラスト、コーション」だ。温
泉へ行きたくても今年は雪も多く、なかなか行けない。
ということで映画鑑賞が増加。その内の1本。
1940年に成立した汪精衛(いわゆる汪兆銘ね)を首班
とする日本の傀儡政権南京国民政府の時代が背景で、舞
台は香港と上海。当時の時代背景をかなり研究しただろ
うセットなど相当に拘った造り。上海も当時様々な国が
入り乱れていた状況の描写が巧み。日本人の描きかたも
全く不自然さがない。その作り込まれた背景があってこ
そ、戦争の異常状況下で敵同士の二人が熱く切なく刹那
的な愛しか逃げ場のなかった話が盛り上がり、サスペン
スフルな展開に目を離せない。
巻頭シーンは、抗日レジスタンス逮捕を任務とする特務
機関の責任者イー(トニー・レオン)の自宅での奥方と
友人の女性たちの麻雀シーン。このシーンがなかなかに
スリリングだ。イー暗殺の特命でイーの愛人となってイ
ー宅へ潜り込んでいるチアチー(1万人から選ばれた新
人タン・ウェイ)とイーの奥方(ジョアン・チェンが貫
禄の演技)たちの丁々発止のやり取りが時代背景や状況
などをさりげなく示して行く。
そして、喫茶店での抗日仲間たちへのチアチーの電話風
景からシーンは4年前に戻り、イー暗殺を謀るようにな
る状況が描かれていく。
チアチーは入学した香港の大学で演劇クラブに入り、抗
日的劇を上演して行くうちに仲間たちと売国奴イーを暗
殺するのが自分たちの使命だと思い込み、結局はチアチ
ーがイーの愛人となって暗殺できる場へおびき出す計画
を進めて行く。
この仲間たちがいわゆる金持ちの坊ちゃん、お嬢ちゃん
たちでその計画がかなり稚拙で、愛人になるためにはセ
ックス経験がないからとチアチーと仲間がセックスに励
むなんてアホなことをマジにやってしまうほど。しかし、
特務機関のベテランであるイーをたらし込むのにまだ大
学に入ったばかりのチアチーがわずかの期間でなり切っ
てしまうというこの映画の一番根幹部分だけに関しては、
いくらなんでもそれは無理だろうって感じるのだが、そ
れを言ってしまうと映画自体が存在しないからまあスル
ーするしかないか。
香港での暗殺計画は完全に失敗し、時は3年後に移って
舞台は上海に。バラバラになっていた演劇仲間たちが再
び集まり、イー暗殺の再度の実施へ。この部分でイーと
チアチーが隠れ家でするセックスシーンがかなり過激。
時間的には長くはないが、タン・ウェイが新人とは思え
ない全裸で大胆な演技だ。少女らしい顔と娼婦的な顔の
二面を的確に表現する。レオンも大胆なセックスシーン
を披露、役者魂発揮。ぼかしが数カ所にあり、もしや本
番をやっているのではと思えるほど。しかし、このセッ
クスシーンこそ二人の命を懸けた緊張感で崩壊しかねな
い精神の象徴的表現であり、戦争のもたらした哀しみが
溢れ出て来る。トニー・レオンの哀しみと情けなさをな
い交ぜた目の演技が凄い。ただ、タン・ウェイは脇毛剃
らないのがやけにエロチックなんだが、ペチャパイで乳
首が大きすぎ。また、レオンもお尻の肉が弛み過ぎとい
うことであまりエロスの香りはない。
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