オペラ好きには堪らない映画「月の輝く夜に」を久しぶりに観る。「ラ・ボエーム」の舞台が華を添える
行きたい温泉地の情報を見るとまだまだ雪が深い土地
が多そうで、なかなか温泉巡りドライブへ行く機会が
なく、映画館へ行ったりビデオで映画三昧の日々。
そんな映画三昧のなかで2日ほど前NHKBSで木曜の深
夜(つまりは金曜日のことね)に映画「月の輝く夜に」
を放送していたので、DVDレコーダーに録画しておいた。
公開時に試写会で観て以来いわゆるロマンチック・コメ
ディジャンルではもっともお好みの映画。
LDでは一応所有しているのだが、映像的に画質が甘くて
今ひとつ。今回の放送を機会にDVDでも保存しておくこ
とにした。今日DVD録画してあるのを観てみると、LD
の画質よりも鮮明度が格段に違う。音自体はほとんど変
わりないが、技術の進歩は凄いを実感するだけ。
映画はあの名作「アメリカ上陸作戦」「夜の大捜査線」を
放ったノーマン・ジュイソン監督の起死回生の87年の作
品。恋と人生とオペラを心ゆくまで堪能するニューヨーク
に生きるイタリア系住民の人生を目一杯楽しむまさしく恋
に生き、歌に生きる描写には心躍るばかり。
舞台はニューヨーク・ブルックリンのイタリア系社会。仕
事一筋の美貌の未亡人(シェール)は幼なじみの男(ダニ
ー・アイエロ)と長い付き合いの末にやっと婚約するが、そ
の婚約者のヨーロッパ旅行の間に男の弟(ニコラス・ケイ
ジ)と恋仲となってしまい婚約者を裏切る形となる。
弟との結婚へ至るプロセスに絡めて、未亡人の家族の模様な
どが描かれて行き、恋と料理とオペラに溢れるイタリア系住
民たちのおおらかなちょっと羨ましいような人生模様がおと
ぎ話のように進行する。
オペラ好きなニコラス・ケイジの恋に盲目な伊達男ぶりはケ
イジにとってもベスト級の演技だし、そのケイジのキャラク
ターの濃さをさりげなく凌駕してしまって全編をさらうのが
シェール。仕事一筋に生きて来て、オシャレもしていなかっ
たシェールがケイジとの初デイトのために久しぶりに美容院
に行き、髪を染め、ドレスを誂えて変身して行くシーンのワ
クワク感。
映画の巻頭シーンからメトロポリタンオペラの小道具を運ぶ
トラック、楽屋裏などを見せてオペラ好きをくすぐる映画だ
が、シェールとケイジの初デイトがメトでのオペラ「ラ・ボ
エーム」の公演。そのオペラの心象風景とデイトで盛り上が
る二人の恋心が巧みにリンクして行く味わいはオペラ好きに
は堪りません。シェールのアカデミー賞主演女優賞は納得の
演技。これほどオペラ座、その公演が映画の本筋と微妙に絡
みながら双方の魅力を倍加している映画は希少。
さらにシェールの母親役で、家族を温かく見守るオリンピ
ア・デュカキス(アカデミー賞助演女優賞)や、浮気をして
いる小心者のその夫(ヴィンセント・ガーディニア)、教え
子の若い女子大生に手を出しては振られている大学教授など
生きる歓びの中に垣間見える悲哀など脚本の出来の良さも抜
群で、見終わったあとの心地良さはなんとも言えない。
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