映画・テレビ

2008年3月18日 (火)

暴力と死の世界を淡々と描く映画「ノーカントリー」

昨日は3年ちょっと前に手術した脊椎狭窄症の定期的な
術後診察。月曜日と言うこともあるし、暖かいこともあ
り整形外科はいつも以上の激混み。一応予約制なのであ
る程度時間は読めるのだが、それでも病院で待つのは疲
れる。

診察終わって、昼食食べて、書店をブラブラしていたら
映画を観たくなり、先週土曜日から公開になったばかり
のアカデミー賞で作品・監督・脚色・助演男優賞4部門
受賞の話題作コーエン兄弟監督の「ノーカントリー」を
観て来た。

「赤ちゃん泥棒」からお気に入りの監督なのだが、今回
のは全編支配する静謐感が心の闇をより鮮やかに見せる。
毎回独自の世界観と映像感覚で魅せるコーエン兄弟の暴
力と死がテーマの映画が作品賞というのも現在のアメリ
カの時代相を反映したものだと実感させるもので、暴力
とあっけない死が日常の世界をシンボリックに描く冷え
冷えとした感触が独特の味わいで、受け付けない人には
忌避反応も出そう。

その暴力と死に不感症になったかのような殺し屋(助演
男優賞受賞のハビエル・バルデムが怪演)の殺すことの
意味さえ喪失した“目の前にいるから殺す”的殺戮の不
条理さ、牛の屠殺用の圧縮空気銃利用の奇矯さと殺しの
効率化。自己のルールに従って殺すだけだとする殺し屋
の無表情、あまりの冷静さ、痛みさえ感じないかのよう
な不気味さ、恐怖とは裏腹の圧縮ボンベを引きずる姿の
滑稽さのアンバランスさなどハビエルが体現する殺し屋
は映画史上でもトップランクの強烈なキャラクターだろ
う。

2                  

 

 

 

この殺し屋の存在は国際政治の場で自国のルールを押
し通し、軍事力を行使するアメリカのメタファーでも
あるのだろうか。

舞台は1980年のメキシコ国境に近いテキサスの田
舎町。ベトナム帰還兵モス(ジョシュ・ブローリンが
好演、「アメリカン・ギャングスター」でもいい味出
していた)が荒野で狩猟中に麻薬組織同志の銃撃戦の
あとと思われる死体の山に遭遇し、鞄に入った現金2百
万ドルを持ち逃げする。しかし、組織に素性を知られ、
おかっぱ頭の冷酷な殺し屋(ハビエル・バルデム)の
執拗な追跡にあう。その事件担当する老保安官(トミ
ー・リー・ジョーンズ)は、行く先々で無惨な死に直
面し虚無感を感じて行くばかり。

原題が「NO COUNTRY FOR OLD MEN」(日本タイ
トルでは意味不明)で、年とった者にもう国はないと
いう意味だろうが、この保安官がナレーションや劇中
で「昔は良かった。今はあまりにひどい」みたいなぼ
やきが、淡々と展開される殺しのシーンとの間に異化
効果を生じる。保安官の諦観ぶりを淡々と演じるトミ
ー・リー・ジョーンズの渋さが際立つ。

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2008年3月 4日 (火)

お下劣な笑い満載の最近では出色のお馬鹿映画「俺たちフィギュアスケーター」はフィギュアスケートファンなら数倍楽しめる

昨日は株式市場は先週末の米市場の下落、円高でどう
せ大幅下落で見ていても面白くもないだろうし、もう
日本の株式はどうでも良い投げやり状態なので、嫁さ
んに早く作れと言われているかなり以前に期限切れに
なっているパスポートを申請に池袋へ。

パスポート申請は以前は有楽町交通会館ばかりだった
ので、池袋サンシャインシティにあるとは知らなかっ
たのだが、こちらのほうがバスで行けて安くて便利と
いうことで池袋へ。がら空きで10分程度で申請終了。

久しぶりに池袋へ来たのでビックカメラをブラブラ。そ
のあと帰宅前に映画を1本見て行こうと、株主優待券で
観られる池袋東急で上映していた映画「俺たちフィギュ
アスケーター」を観て来た。

この映画、昨年末に少数の映画館で細々と公開された映
画で、池袋東急では穴埋め的に短期の臨時公開だったよ
う。でも、題材だけで昨年春のアメリカ公開時から観た
かったオ馬鹿映画。なにしろあの美しさを競うフィギュ
アスケートのペア競技に男二人のペアで参加するアイデ
ア一発勝負的なコメディ映画。クラシックバレーに女性
用のチュチュを着て男性バレリーナたちが「白鳥の湖」
などを踊るトロカデロバレー団なんてのが人気なのだが、
その辺りからの発想もあるのだろうね。

マイケルズ(ウィル・フェレル)とマッケルロイ(ジョ
ン・ヘダー)はアメリカ・フィギュア男子シングル部門
でのトップ選手で、ライバル同士。不良上がりでマッチ
ョぶりが売りのセックス大好きお下劣なマイケルズ。ス
ポーツ選手育成好きな富豪の養子で、女性的な優雅さが
売りのお上品童貞マッケルロイ。

性格も演技も対照的な二人はある大会で同点で1位になり、
表彰式で乱闘してしまい金メダル剥奪、スケート界から
追放になる。マイケルズは子供向けアイスショーで働き
投げやりにアル中状態。富豪から養子縁組を切られたマ
ッケルロイはスポーツ用品店でお仕事。

フィギュアスケート界への復帰を断念して失意の日々の二
人だが、追放されたのはシングル部門だけ、ペアなら大
丈夫と規約の抜け穴を発見したコーチの肝いりで男女ペア
ならぬ男男ペアでフィギュアスケートの世界へ復帰、トッ
プを再び目指すのだった。

フェレルとへダーの極端に違うキャラの二人が反目し合い
ながら、猛特訓してペアのトップへ躍り出るまでのプロセ
スがスポ根ものの味わいも交えてかなり楽しめる。

スケートの長期の特訓もあったとかで、スケートシーンも
CGの上手さもあるのだろうが、迫力満点。フェレルの弛ん
だ体と下劣なキモサがあるのだが、スケートシーンは本格
的に見せて、男同士のペアなのを忘れさせるような美さえ
ある。その中にかなりブラックな笑いまで含めて全編が爆
笑とくすぐり笑いの連続。

フェレルもへダーも日本では無名に近いが、アメリカでは
人気者。フェレルは「奥様は魔女」であまり面白くなかっ
たのだが、この作品ではそのキャラを良い方向で全面的に
開花させていて、日本人好みの俳優ではないだろうが、全
米公開時2週連続1位の大ヒットになったのも納得できる。

北朝鮮でコーチが開発した究極の荒技の北朝鮮での競技で
のビデオでは女性選手の首がスケートのエッジで切られて
ちょん切れる超ブラックユーモアなシーン、股間わしづか
みのリフトアップのシーンなどゲラゲラシーンも満載。

全米フィギュスケート界が協力したようで、有名フィギュ
ア選手総出演。2006年トリノオリンピック女子シングル銀
メダリストのサーシャ・コーエンは、フェレルの脱ぎ捨て
たバンツを嗅いで陶酔状態になる爆笑演技まで披露。フィ
ギュアスケートファンなら何倍も楽しめる映画だが、映画
館では公開はもう終わりだろうから、ビデオで楽しんでく
ださい。
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2008年3月 1日 (土)

オペラ好きには堪らない映画「月の輝く夜に」を久しぶりに観る。「ラ・ボエーム」の舞台が華を添える

行きたい温泉地の情報を見るとまだまだ雪が深い土地
が多そうで、なかなか温泉巡りドライブへ行く機会が
なく、映画館へ行ったりビデオで映画三昧の日々。

そんな映画三昧のなかで2日ほど前NHKBSで木曜の深
夜(つまりは金曜日のことね)に映画「月の輝く夜に」
を放送していたので、DVDレコーダーに録画しておいた。
公開時に試写会で観て以来いわゆるロマンチック・コメ
ディジャンルではもっともお好みの映画。

LDでは一応所有しているのだが、映像的に画質が甘くて
今ひとつ。今回の放送を機会にDVDでも保存しておくこ
とにした。今日DVD録画してあるのを観てみると、LD
の画質よりも鮮明度が格段に違う。音自体はほとんど変
わりないが、技術の進歩は凄いを実感するだけ。

映画はあの名作「アメリカ上陸作戦」「夜の大捜査線」を
放ったノーマン・ジュイソン監督の起死回生の87年の作
品。恋と人生とオペラを心ゆくまで堪能するニューヨーク
に生きるイタリア系住民の人生を目一杯楽しむまさしく恋
に生き、歌に生きる描写には心躍るばかり。

舞台はニューヨーク・ブルックリンのイタリア系社会。仕
事一筋の美貌の未亡人(シェール)は幼なじみの男(ダニ
ー・アイエロ)と長い付き合いの末にやっと婚約するが、そ
の婚約者のヨーロッパ旅行の間に男の弟(ニコラス・ケイ
ジ)と恋仲となってしまい婚約者を裏切る形となる。

弟との結婚へ至るプロセスに絡めて、未亡人の家族の模様な
どが描かれて行き、恋と料理とオペラに溢れるイタリア系住
民たちのおおらかなちょっと羨ましいような人生模様がおと
ぎ話のように進行する。

オペラ好きなニコラス・ケイジの恋に盲目な伊達男ぶりはケ
イジにとってもベスト級の演技だし、そのケイジのキャラク
ターの濃さをさりげなく凌駕してしまって全編をさらうのが
シェール。仕事一筋に生きて来て、オシャレもしていなかっ
たシェールがケイジとの初デイトのために久しぶりに美容院
に行き、髪を染め、ドレスを誂えて変身して行くシーンのワ
クワク感。

映画の巻頭シーンからメトロポリタンオペラの小道具を運ぶ
トラック、楽屋裏などを見せてオペラ好きをくすぐる映画だ
が、シェールとケイジの初デイトがメトでのオペラ「ラ・ボ
エーム」の公演。そのオペラの心象風景とデイトで盛り上が
る二人の恋心が巧みにリンクして行く味わいはオペラ好きに
は堪りません。シェールのアカデミー賞主演女優賞は納得の
演技。これほどオペラ座、その公演が映画の本筋と微妙に絡
みながら双方の魅力を倍加している映画は希少。

さらにシェールの母親役で、家族を温かく見守るオリンピ
ア・デュカキス(アカデミー賞助演女優賞)や、浮気をして
いる小心者のその夫(ヴィンセント・ガーディニア)、教え
子の若い女子大生に手を出しては振られている大学教授など
生きる歓びの中に垣間見える悲哀など脚本の出来の良さも抜
群で、見終わったあとの心地良さはなんとも言えない。

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2008年2月25日 (月)

アメリカアカデミー賞発表。「ノーカントリー」が主要4部門受賞。演技賞はアメリカ人俳優なし

アメリカアカデミー賞発表が発表になった。昔試写会に
毎日通い、映画を観ることが仕事で、趣味と仕事が一致
していた楽しい頃はこのアカデミー賞の受賞予想をする
のが面白かった。だいたい年間平均350本程度は試写
会で観ていたので、かなりの確率で予想が当たった。

しかし、今は試写会は年に2〜3本観る程度だし、内容
を観ないで予想をすることは不可能。評論家などの前評
判では、作品的にはコーエン兄弟の「ノーカントリー」
が強そうだったが、演技賞面ではかなり別れていた。確
率的にかなり高そうなのは「ゼア・ウィル・ビー・ブラ
ッド」のダニエル・デイ・ルイスぐらいだった。

ということで、その結果はと言うと、「ノーカントリー」
が作品賞、監督賞、脚色賞と主要部門を受賞し、さらに
助演男優賞(ハビエル・バルデム)で4部門獲得と前評
判通りの強さ。

演技賞では助演女優賞が「フィクサー」のティルダ・ス
ウィントン、あの「オルランド」のスウィントンだし、納
得。主演男優賞が「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」の
ダニエル・デイ・ルイスで「マイ・レフト・フット」以
来2度目の主演男優賞、予告編観るだけで熱演バリバリ
状態だものね。主演女優賞が「エディット・ピアフ~愛
の讃歌」のマリオン・コティヤール、ウーンあの破滅人
生なり切り演技はまさにアカデミー好み。

つまりは演技4賞はアメリカ人俳優なし。ジョニー・デッ
プのあの見飽きたワンパターン演技などではどうしよう
もないしね。スウィントン、デイ・ルイスがイギリス人、
バルデムがスペイン人、コティヤールがフランス人。

それを補うように、「ノーカントリー」が4賞、「ボー
ン・アルティメイタム」が編集賞、音響編集賞、録音賞
とこれもあのあっと驚く映像観たら納得の3賞受賞で、
なんとも絶妙の賞配分。

その他の受賞は、
脚本賞 「JUNO/ジュノ」
美術賞 「スウィーニー・トッド フリート街の悪魔の理髪師」
撮影賞 「ゼア・ウィル・ビー・ブラッド」
衣装デザイン賞 「エリザベス:ゴールデン・エイジ」
メイクアップ賞 「エディット・ピアフ~愛の讃歌~」
作曲賞 「つぐない」
視覚効果賞 「ライラの冒険 黄金の羅針盤」
外国語映画賞 「ヒトラーの贋作」

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2008年2月13日 (水)

リドリー・スコット監督の新作「アメリカンギャングスター」は久しぶりの大人の味わいの刑事・犯罪映画

温泉になかなか行けないので、映画や読書、音楽三昧
の毎日。そこで、また映画でお茶濁し。最近のCGで
どんなアクションでも作ってしまう映画にはちょっと
食傷気味。ファンタジーものなんてのはとくに「ロー
ド・オブ・ザ・リング」でもう十分な気分になってし
まう。しかし、その手のファンタジーものはあとから
あとからやって来る。そんな流れので中でCGほぼなし、
アクションも派手なもの皆無で、ドラマで魅せる刑事
犯罪ものとしてリドリー・スコット監督の新作「アメ
リカンギャングスター」は久しぶりに大人がじっくり
堪能できる映画だった。

デンゼル・ワシントンとラッセル・クロウがスコット
監督のメガフォンのもと共演する実録犯罪サスペンス
と来ただけで映画ファンの心をくすぐる。クロウとス
コット監督が組んだ前作「プロヴァンスの贈り物」が
今ひとつピンと来なかったのだが、今回のは期待通り
のリアリスティックな犯罪映画。

デンゼル・ワシントンの知性派黒人ギャングの冷静沈
着なスタイリッシュなギャングも出色。そして、「LA
コンフィデンシャル」での刑事にも相通じる職務一直
線のはみ出しデカのクロウがいい味出している。

映画は1970年代のニューヨークを舞台に、それまで
のマフィアのやり方とは異なる麻薬ビジネスで暗黒街
で勢力を拡大する黒人ギャングの動きと、一切の買収
に応じることなく職務一直線ではあるが、家庭的には
崩壊状態の刑事の麻薬捜査が丁寧に描写されて行き、
ラストへ向けてスリリングに展開する。

60年代末のニューヨーク。黒人ギャングのボスの右
腕として働いて来たフランク(ワシントン)はボスの
死後、ボスの地盤を引き継いで、東南アジアのトライ
アングル地帯から純度100パーセントヘロインの直接
仕入の独自ルートを作る。

それは麻薬流通ルートで中間搾取をせず、確実な輸送
手段で麻薬生産業者とヤク中をダイレクトに直結、良
質で安価な麻薬を供給する真っ当な経済原理に基づい
た新しいビジネスとして大成功して行く。

しかし、それは既存のマフィアやフレンチコネクショ
ンルートの麻薬商売と敵対することになるとともに、
買収や押収麻薬の転売で汚いカネを手にしていた腐敗
した警察官たちとも対立して行くことになる。このフ
ランクのビジネスはモノが麻薬でなければまさにやり
手のエリートビジネスマンそのもの。その知的なキャ
ラクターと容赦なく敵を殺す冷徹さをデンゼル・ワシ
ントンが演じ切る。

一方、買収などで腐敗し切っているニュージャージー
警察の刑事リッチー(クロウ)は、警官の汚職が当た
り前のなか職務一直線の潔癖性で周囲から浮いた存在
になリ、孤立していた。司法試験の勉強もしながらの
刑事の仕事だが、私生活では離婚した妻と養育権裁判
中。そんな彼を検察官が麻薬特別捜査班の責任者に抜
擢する。そして、既存の麻薬組織とは違う動きでなか
なか捜査が進まなかったフランクの組織が浮上して来
て、リッチーたちの捜査網が追って行くことになる。

ドラマの進行はどこまでも淡々と進む。麻薬組織を育
て上げて行く過程などが丁寧に描かれているので実話
を元にしたリアリティがさすがだ。銃撃のシーンなど
もほとんどなく、カーアクションさえ皆無に近く、犯
罪組織の動きと捜査陣の動きが徐々に交差して行くサ
スペンスの醸成が見ものだ。上映時間157分、飽き
ることまったくない。久しぶりに大人の味わい映画。

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2008年2月10日 (日)

戦争という異常状況下でスリリングに展開する男女の愛の刹那さを描くアン・リー監督「ラスト、コーション」

「いつか晴れた日に」「楽園をください」「グリー
ン・デスティニー」「ハルク」「ブロークバック・マ
ウンテン」と題材、ジャンル、起用俳優など毎回多彩
で変幻自在な映画が続くアン・リー監督がまたまたや
ってくれました。158分の超大作。その時間の長さ
を全く感じさせないドラマの濃密で緊密な展開は余裕
の風格さえ漂う映画が「ラスト、コーション」だ。温
泉へ行きたくても今年は雪も多く、なかなか行けない。
ということで映画鑑賞が増加。その内の1本。

1940年に成立した汪精衛(いわゆる汪兆銘ね)を首班
とする日本の傀儡政権南京国民政府の時代が背景で、舞
台は香港と上海。当時の時代背景をかなり研究しただろ
うセットなど相当に拘った造り。上海も当時様々な国が
入り乱れていた状況の描写が巧み。日本人の描きかたも
全く不自然さがない。その作り込まれた背景があってこ
そ、戦争の異常状況下で敵同士の二人が熱く切なく刹那
的な愛しか逃げ場のなかった話が盛り上がり、サスペン
スフルな展開に目を離せない。

巻頭シーンは、抗日レジスタンス逮捕を任務とする特務
機関の責任者イー(トニー・レオン)の自宅での奥方と
友人の女性たちの麻雀シーン。このシーンがなかなかに
スリリングだ。イー暗殺の特命でイーの愛人となってイ
ー宅へ潜り込んでいるチアチー(1万人から選ばれた新
人タン・ウェイ)とイーの奥方(ジョアン・チェンが貫
禄の演技)たちの丁々発止のやり取りが時代背景や状況
などをさりげなく示して行く。

そして、喫茶店での抗日仲間たちへのチアチーの電話風
景からシーンは4年前に戻り、イー暗殺を謀るようにな
る状況が描かれていく。

チアチーは入学した香港の大学で演劇クラブに入り、抗
日的劇を上演して行くうちに仲間たちと売国奴イーを暗
殺するのが自分たちの使命だと思い込み、結局はチアチ
ーがイーの愛人となって暗殺できる場へおびき出す計画
を進めて行く。

この仲間たちがいわゆる金持ちの坊ちゃん、お嬢ちゃん
たちでその計画がかなり稚拙で、愛人になるためにはセ
ックス経験がないからとチアチーと仲間がセックスに励
むなんてアホなことをマジにやってしまうほど。しかし、
特務機関のベテランであるイーをたらし込むのにまだ大
学に入ったばかりのチアチーがわずかの期間でなり切っ
てしまうというこの映画の一番根幹部分だけに関しては、
いくらなんでもそれは無理だろうって感じるのだが、そ
れを言ってしまうと映画自体が存在しないからまあスル
ーするしかないか。

香港での暗殺計画は完全に失敗し、時は3年後に移って
舞台は上海に。バラバラになっていた演劇仲間たちが再
び集まり、イー暗殺の再度の実施へ。この部分でイーと
チアチーが隠れ家でするセックスシーンがかなり過激。
時間的には長くはないが、タン・ウェイが新人とは思え
ない全裸で大胆な演技だ。少女らしい顔と娼婦的な顔の
二面を的確に表現する。レオンも大胆なセックスシーン
を披露、役者魂発揮。ぼかしが数カ所にあり、もしや本
番をやっているのではと思えるほど。しかし、このセッ
クスシーンこそ二人の命を懸けた緊張感で崩壊しかねな
い精神の象徴的表現であり、戦争のもたらした哀しみが
溢れ出て来る。トニー・レオンの哀しみと情けなさをな
い交ぜた目の演技が凄い。ただ、タン・ウェイは脇毛剃
らないのがやけにエロチックなんだが、ペチャパイで乳
首が大きすぎ。また、レオンもお尻の肉が弛み過ぎとい
うことであまりエロスの香りはない。

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2008年1月24日 (木)

ジョニー・デップがはさみをカミソリに持ち替えて人間の喉を裂きまくるホラーミュージカル「スウィーニー・トッド」は楽しめることは楽しめるが・・

ジョニー・デップがはさみで木を刈り込んでいた「シ
ザーハンズ」から、鋭利なひげ剃りで人肉入りミート
パイ用に喉を切り裂きまくる理髪師に扮してダークな
世界を歌入りで仲良しのティム・バートン監督と作り
上げた映画が「スウィーニー・トッド/フリート街の悪
魔の理髪師」だ。全く中身そのままのタイトル。アイ
ドル的デップファンが観たらかなり引いてしまうかも
しれない映画かな。

「眺めのいい部屋」で初めてスクリーンで観た個性派
女優ヘレナ・ボナム・カーターもデップに負けず劣ら
ずと言うか、かなり意識的に役造りに徹していて、二
人でダークな連続殺人人肉入りミートパイ製造販売の
血みどろの世界を楽しんで演じてますね。ヘレナって
英国の超上流出身の文字通りの令嬢だけど、映画では
かなりポジティブで、面白い映画が多い。現在はティ
ム・バートンと同棲しているんだったかどうか確かバ
ートン監督の子供を産んでいるから、この映画なんて
まさしく夫婦共作だね。

ティム・バートン監督って基本的には駄作がないので、
今回も期待ほどではなかったが裏切らないですね。ミ
ュージカル版の映画化のようだが、ミュージカルにこ
だわる必要があったのかなというのが一番の不満。デ
ップが復讐の一心で妻を奪った判事(アラン・リック
マンが憎まれ役をいつも通りに好演)を殺すまで、恋
人的になってしまったミートパイ売りのヘレナの商売
の手伝いで、独りでやって来た理髪の客の喉を次々に
掻き切ってはミートパイ用の肉にすると言うかなり危
ない素材。

私にとってはミュージカルはMGMのあの極彩色の明
るいものが最高で、今回の素材などミュージカルには
一番不適合。殺しているのに歌ったりするとドッチラ
ケになってしまう。ホラーサスペンスとしてきちんと
したドラマ構成にしてほしかったな。

でも、セピア調というよりほとんどモノクロに近い色
調に調整した画面の美しさ、ロンドンの街の造り込み
などさすがバートン監督のこだわり爆発で、巻頭のタ
イトルから大いに楽しめる。でも楽しめない人も多い
だろうな。カミソリで喉を切り裂くシーンは拳銃で殺
すとかのシーンより、観ていて痛みが伝わり過ぎなん
だよね。これ観たら、怖くて散髪屋さんに行くと、ひ
げ剃りは安全剃刀でやってくださいと言いたくなるこ
と請け合い。

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2008年1月23日 (水)

レンフロが死んだばかりなのに、またまたハリウッド俳優が20歳代で急逝。成長株ヒース・レジャーが28歳で死去のびっくりニュース

株式相場のことはもうどうでも良い気分に陥ってし
まったので昨夜は久しぶりに500ページほどもあ
る小説を読み始めてしまって、読み終わったのが朝
方の5時頃。本は読み始めると読み終わるまで一気
なので疲れるんだよね。で、酒もかなり飲みながら
だったのでそのまま就寝して、起床した午後3時半
頃に。

まあ、株式市場も少しは戻しているかもしれないが、
どうでも良いやで全く見ず。そのままNHKBSで大
相撲観戦。観戦しようと思ったら、なんだ国会中継
やっていやがる。クソどものダベリを聞いても意味
ない。しかも、ちょうどネズミ男が答弁中だ。テレ
ビスイッチ即オフ。新聞のラテ欄みたら3時40分
から大相撲だったんだ。

という訳で、大相撲観戦しながらネット徘徊してい
たら、ついこの間ブラッド・レンフロが25歳の若
さで急逝したばかりなのに、今度はレンフロ以上に
ハリウッドの成長株として良い映画が続いていた俳
優ヒース・レジャーが28歳の若さで亡くなってし
まった。自宅で死んでいるのが発見されたようだが、
薬が原因なのか、何とももったいない。そんなに死
に急ぐ必要もないだろうが。合掌。

朝日新聞ウェブによると
…………
米俳優ヒース・レジャーさん死去
2008年01月23日10時39分
 同性愛の苦悩を描いた米映画『ブロークバック・マウンテン』(05年)でアカデミー賞主演男優賞候補になった俳優ヒース・レジャーさんが22日、ニューヨークのアパートで死去しているのが見つかった。28歳。
 ニューヨーク市警によると、予約したマッサージ師の到着を知らせに行った家事手伝い人がベッド脇の床でうつぶせになった遺体を見つけた。睡眠薬が残されており、市警が「過剰摂取の疑い」を調べている。
 オーストラリア出身。幼い頃から演劇を始め、19歳で渡米し、『恋のからさわぎ』(99年)でハリウッドデビュー。今年公開予定の映画バットマンシリーズ最新作では悪役ジョーカーを演じ、撮影を終えていた。
…………である。

初めてスクリーンでレジャーを観たのが「パトリオッ
ト」の愛国心溢れる青年役。そして、「ロック・ユー」
「サハラに舞う羽根」とコスチュームプレイが似合う
俳優として期待株となった。そして「チョコレート」
での演技派としての面も見せて、アカデミー賞でもノ
ミネートされた「ブロークバック・マウンテン」と順
調にキャリアを重ねていたのに、一体何があったのか。
残念だ。遺作は今夏公開予定の「バットマン/ザ・ダー
ク・ナイト」でのジョーカー
になりそうだね。写真は
好きな映画「サハラに舞う羽根」でのレジャー。

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2008年1月21日 (月)

60年代初期の美人女優スザンヌ・プレシェットが死去、享年70歳

今日も株式市場は大暴落で株式を持っていること自体
を忘れてしまいたい心境。もうどうでもいいや。とい
うことで、他のニュースを見たら、共同通信ウェブに
60年代初期に人気のあった美人女優スザンヌ・プレ
シェットが死去のニュースが。

それによると
…………
S・プレシェットさん死去   米女優
 スザンヌ・プレシェットさん(米女優)AP通信によると、19日、呼吸器不全のためロサンゼルスの自宅で死去、70歳。06年に肺がんで化学療法を受けていた。
  37年、ニューヨーク生まれ。舞台で経験を積んだ後、58年に「底抜け慰問屋行ったり来たり」で映画デビュー。その後も「恋愛専科」(62年)やヒチコッ ク監督の「鳥」(63年)などに出演、テレビショーでも活躍した。(共同)2008/01/20 20:07  【共同通信】
…………だそうです。合掌。

60年代初期のころはハリウッド辺りには美人女優が
山のようにいたね。現在のハリウッドのようにジュリ
ア・ロバーツやアンジェリーナ・ジョリーのような個
性的ではあるが、いわゆる美人女優とは言えない女優
が主流とはちょっと違っていた。デボラ・カー等々手
の届かないようなスターらしい超美人がわんさかだっ
た。そのなかで、プレシェットはフランソワーズ・ア
ルヌールあたりの持つ雰囲気のある美人女優で強烈な
印象があまりなかったのか60年初期でその人気は終
了した。

そのなかでも一番印象的な出演作がヒチコック監督の
サスペンススリラーの傑作「鳥」での小学校の先生役。
主演のティッピー・ヘドレンの金髪に対比してか、黒
髪でグレーっぽい瞳のちょっと哀愁のある表情が中学
生の頃映画館で見てなぜか惹かれた記憶がある。だが、
その役はカラスに襲われて庭先で殺されてしまう悲惨
なもので、ヒチコック監督の好みはやはり金髪なんだ
ねと思ったものだ。それにしてもこの寒さは何だ。寒
すぎる。体も心も、それに懐まで冷え冷えだ。温暖化
大歓迎だよ。
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2008年1月16日 (水)

「依頼人」で映画デビューのブラッド・レンフロが25歳で死去

CNNニュースサイトに出ていた記事によると
…………
ロサンゼルス(AP) 映画「依頼人」の子役でデビューした米俳優のブラッド・レンフロさん(25)が15日、ロサンゼルスの自宅で死んでいるのが見つかった。死因は調査中。
ロサンゼルス郡検死官事務所によると、レンフロさんは前夜、友人と飲酒していた。レンフロさんは2006年5月、酒酔い運転と麻薬所持未遂で10日間収監されたことがある。
…………云々の内容。「依頼人」ではスーザン・サラ
ンドン相手に天才子役ぶりを発揮したり、そのあとも
「スリーパーズ」や「ゴールデン・ボーイ」など意欲
的な作品で良い演技を見せていたんだけどね。ハリウ
ッドで売れた子役ってのはどうもその後にプレッシャ
ーからか生活が乱れてしまうのが多いようだ。リヴァ
ー・フェニックスなんてその典型で、23歳ぐらいの
若さで自殺同然に死んだし、マコーレー・カルキンや
女優のドリュー・バリモアなんてのもその例だ。誰か
周りで生活をキチンと見守る人間がいなかったのかな。

写真は95年制作の映画「マイ・フレンド・フォーエ
バー」の期待の星だった頃のレンフロ。

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2008年1月 1日 (火)

謹賀新年。R・シュトラウス「ホルン協奏曲第一番」で聴き始め。楽しみのウィーンフィル・ニューイヤーコンサートは好きなプレートル

新年あけましておめでとうございます。今年もよろしく
お願いします。という訳で、元旦は午前0時過ぎに家の
真ん前にある稲荷神社に初詣に行こうかと思ったのだが、
酒も入っていて良い気分になっているし、外はえらい寒
そうなので面倒くさくなり稲荷神社に向って手を合わせ
て終わり。外を見ると、神社前にはかなりの人たちがす
でに集まっている。家から参拝も問題ないのではないだ
ろうか。イスラム教では世界のどこにいてもメッカに向
って礼拝すればいい訳だしね。

そして、新年一発目の入浴。温泉に入った気分になるた
めに入浴剤投入。冬は閉鎖で入浴できない国見温泉石塚
旅館の湯をイメージするために透明な緑色にしてボケー。
そのあとはNHKBSで午前1時過ぎからベルリンフィルの
ジルヴェスターコンサートの生中継を観てしまった。新
年最初の曲は何にしようかななんて考えていたのだが、
結局サイモン・ラトル指揮ベルリンフィルのロシア音楽
になった。

ラトルらしいというか、いかにも彼らしい気を衒った選
曲。曲はボロディンの歌劇「イーゴリ公」 からダッタン
人の踊りに始まり、同じくボロディン作曲の交響曲 第2
番 ロ短調と続き、ムソルグスキーの歌劇「ホヴァンシチ
ナ」 序曲、組曲「展覧会の絵」で、アンコールがショス
タコーヴィッチの「黄金時代」からダンスだ。

どうもピンと来ない演奏だった。熱気と盛り上がりに徹
底的に欠けるし、カラヤンのような徹底的な美へのこだ
わりも感じられない。ベルリンの人たちはこんな演奏で
満足しているのだろうか。ラトルはバーミンガムを指揮
していた初期の頃の録音で、メシアンのトゥランガリー
ラやストラヴィンスキーなんかは面白かったんだけどね。
今回のロシア特集はまるで面白くなかった。

ということで、このコンサートは元旦はじめに見たのだ
が、基本的にはジルヴェスターコンサートなので昨年の
最後の曲として、今朝遅めに起きて2008年初頭の曲
としてさてと考えて、お雑煮を食べる前にさっと聴ける
清々しいものとして選んだのが、若きR・シュトラウス
が作曲した「ホルン協奏曲第1番」だ。ホルンはラドヴ
ァン・ヴラトコヴィッチ、指揮はジェフリー・テイト。
いつ聴いても心晴れやかになる素晴らしい傑作だ。これ
を10代半ばで書いたシュトラウスはやはりモーツァル
トに匹敵する天才なんだろう。元旦の晴れ渡った青空そ
のもののような爽やかな曲。今年1年もこの曲のような
気分が支配すれば最高なんだろうが、まあ自民・カルト
癒着腐敗政権では無理ってものか。

クラシックファンにとっての元旦の楽しみの一つはウィ
ーンフィルのニューイヤーコンサート。NHKがいつから
中継を始めたかは知らないが、初期からずっと毎年見て
いるもので、どの指揮者かなど毎年の楽しみ。今夜は教
育テレビだけで画像は悪い(テレビには地上デジタルチ
ューナーが内蔵されているんだが、まだアンテナ建てて
いないので受信できず)仕方ない。2日にNHKBS、6
日にNHKBSハイビジョンで放送するから録画はそちらで。

今年の指揮者は同コンサート初のフランス人とか。長老
格のジョルジュ・プレートルだ。小沢征爾なんかよりは
ずっと良さそうだ。プレートルを初めて知ったのは19
65年に大枚はたいて買ったカラスの「カルメン全曲」
の指揮者として。その溌剌としてエネルギッシュな音楽
作りにすっかり好きになった指揮者。
プーランクの録音
などかなり楽しく聴いたものだ。ニューイヤーの曲目予
定を見るとやはりシュトラウスファミリー主体、仕方な
いのか。プレートルなんだからオッフェンバックなどの
楽しい曲を一寸多めに入れてほしかったけどね。

これまででもっとも印象に残っているニューイヤーコン
サートはなんと言ってもカラヤン、そして最初のクライ
バー(たしか2回指揮しているはず)に尽きる。好きな
プレートルに期待だ。

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