24日に急遽宿泊を決めて電話予約した南花巻温泉郷・鉛
温泉の一軒宿「藤三旅館」は以前2回日帰り入浴したこと
があり、湯の良さは分かっているのだが、かなり鄙びた感
じの宿だったので部屋などがちょっと心配だった。しかも、
自炊棟利用なだけに心配はより大きい。なにしろ2食付き
で4100円ほどと信じられない値段。
そんな心配は止めにして、途中で「でめ金食堂」、湯川
温泉の「高繁旅館」でのんびりと湯浴みをしてから国道
107号、県道37号、県道12号と走って50分ほど
で藤三旅館に到着。途中には南花巻温泉郷の松倉温泉、
志戸平温泉、渡り温泉、とくに全国的に有名な大沢温泉
が県道12号線沿いに並ぶ。大沢温泉はとくに人気のよ
うで、駐車場にはかなりの数の車が。鉛温泉は大沢温泉
から3キロほど上流。大きな看板で右折して、そのまま
右端の自炊棟の大きな駐車場へ。そして、自炊棟玄関に。
玄関に入って右に帳場が。玄関真ん前には日帰り客も利
用可能な休憩室がある。
帳場でチェックインの記帳をして作務衣風のユニフォー
ムの男性従業員の案内で2階の部屋へ。今回日当りのい
い部屋と言うことで玄関上あたりの18号室。自分の靴
は持参して部屋の格子状の表戸を開けた部屋のいわば玄
関口に置いておく。部屋代は日当りの良い部屋と言うこ
とで100円高くなり4200円。これでテレビ見放題、
部屋食になる。格子状の戸の内側にはふすまで、鍵はか
からない。部屋はきれいに清掃されていて、土壁に6畳
間、それに広縁。自炊棟なので廊下の奥にある調理場を
利用したければ自由に利用できる。タオルや浴衣は宿泊
代には含まれておらずオプション。
鍵がかからず、一人泊なのでとくに金目の貴重品だけは
ビニール袋に二重に入れて風呂にも持参した。部屋は畳
もきれいで、建物が古いだけの話し。旅館部も本館はか
なり年季の入った建物なので、古いのがいやだと言う人
は旅館部の新館を利用すれば問題ない。風呂は有名な立
ち浴する深い浴槽の混浴が基本の白猿の湯、デザインが
奇抜な白糸の湯(基本は男性用)、シンプルな竜宮の湯
(基本は女性用)、2年前の4月に新設されたばかりの
男女別露天風呂付きの桂の湯、自炊棟にある男女別の河
鹿の湯と多く、湯巡りをたっぷり楽しめる。
食事は夕食、朝食とも部屋まで持って来てくれ、食べ終
われば廊下に出しておけばいいシステム。すべてに渡り
ここの従業員の対応は丁寧で素晴らしい。自炊棟利用の
客に対しても実に丁寧だ。というより、従業員は自炊棟
と旅館部は完全に別れているよう。大沢温泉の対応もす
ばらしく、大沢温泉、藤三旅館と自炊が基本の老舗旅館
の対応は金儲けの臭いが感じられず心和み、それに湯の
素晴らしさがあって、真の意味での湯治が出来る。
チェックインして先ずは白猿の湯へ。部屋からは歩いて
10秒ほど。5階建て分ほどの吹き抜けの素晴らしい造
形の浴場で、階段を2階分ほど下りて行く。階段の下に
は浴槽に入っている人からは丸見えの脱衣場が。混浴だ
が、女性にはかなり厳しい環境。だから、1日3回午前
8時〜9時、午後2時〜3時、午後7時〜午後8時半と
女性専用時間が設定されている。それにしても、この湯
底から湯がこんこんと湧き出て来る自然の天然岩風呂は
何回入っても飽きることなく大満足だ。浴槽の深さがか
なり深く、一部には座る部分もあるが基本は立っての入
浴。一番深い場所では174センチの私で肩がほぼ湯に
隠れるほどの場所も。広さもかなり広い浴槽で湯はいつ
も新鮮そのもの。天井が高く、湯煙の抜けも良いので長
湯ができるのもご機嫌だ。
藤三旅館自炊部の夕食タイムは午後5時からと早い。風
呂に入ってまったりとしていたらすぐに5時に。あわて
て部屋に戻ったらすぐに男性従業員(自炊部は基本的に
従業員は男性だけのよう)が食事を持って来た。温泉旅
館のいやになるほど品数の多い夕食にうんざりしてる身
にとっては実に量的にぴったりの食事。かにのグラタン、
マグロとカンパチの刺身、山芋などのぬた、かになどの
すり身団子あんかけ、ホタテ1個入りの茶そばすまし汁、
珍しくも山芋もある漬け物、ご飯で十分すぎる量と質。
しかもそれぞれが味付けも抜群でとても美味しい。完食
してしまった。旅館料理はいつもかなり残してしまうの
に、相当に美味しい証明だ。これで4200円は安すぎ
る。と言うよりほかの旅館が高すぎるのか。冷めた焼き
魚や天ぷらなど出して恥ずかしくないのだろうか。
この夕食がすっかり気に入り、1泊ではもったいないと
急遽26日も宿泊することに。18号室が旅館の道を挟
んで向かいにある商店の機械から出る音が異常に深夜う
るさかったので、部屋を変えてもらうことに。廊下の反
対側の中庭を見る側の28号室に翌日は変更。28号室
は100円安くなって4100円。2日目の夕食もこれ
また美味しかった。メニューは牛肉と野菜の鍋、マグロ
の山掛け、タコのマリネ風、野菜の煮物、鯛の切り身の
入った茶そばすまし汁、山芋も入った漬け物、ご飯と十
分必要条件を完全に満たす料理。鍋の野菜ももやしなど
入れずにタマネギ、茄子、ピーマン、椎茸とシンプルで
しかも素材がかなり良く、これまで旅館で出た鍋では一
番美味しかった。朝食も熱々のベーコンエッグ、のり、
魚、ポテトサラダなど十分な量で、朝食は旅館部もほぼ
同じようだ。とにかく自炊部の4100円ほどの2食付
き得々湯治パックは温泉を楽しみ、健康な食事をするに
は最高の選択。これからもこの自炊棟宿泊はかなり利用
するかも。
風呂は白猿の湯以外もほぼ同じアルカリ性単純泉で、す
べて豊富な掛け流し。旅館部にある白糸の湯も川面を眺
められる眺望の良さとデザインの奇抜さでかなりのお好
みに。旅館部にあると言っても、自炊棟利用の客も利用
できる。基本的にどこに宿泊していても風呂はすべて利
用できるのも藤三旅館のメリット。日帰り温泉入浴だけ
でも700円だけに自炊棟宿泊の4100円の料金の安
さが際立つ。
2年前に露天風呂付きで新設されたのが白猿の湯のすぐ
横にある「桂の湯」で、川を眺められる露天風呂もあり、
人気は一番のよう。手洗いやトイレ、無料の貴重品入れ
なども装備され、ごく普通の奇麗な温泉旅館の風呂。し
かし、藤三旅館のイメージとはちょっとかけ離れたもの
であるのも確か。一般客を呼ぶにはやはりこの種の風呂
が必要なこともあるが。
自炊棟にある男女別の河鹿の湯はいつも空いているし、
洗い場も広く使いやすい。シンプルな浴槽もいかにも
湯治にぴったりでここもかなりのお気に入りに。あま
り特徴のない湯だけに、じっくりと一日に何回も浸か
って湯治するには最適の旅館だろう。その湯に加えて
激安の自炊棟宿泊。1週間や10日と長めの宿泊をし
て本当の贅沢を楽しめる旅館だ。
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